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はじめに

 人は国の宝です。人の数は国や組織体の力です。子供が生れなければその種族や国は必ず滅亡します。少子化が続くと、国は徐々に確実に衰退します。そして日本はすでに衰退の前段階としてすべての面で停滞しています。発展している世界の主要国との比較で見れば、日本は少子化により相対的に衰退していると言えます。

 若い人が都市へ移り、老人だけになった過疎地の山村や離島では、家々は荒廃の一途をたどり、鉄道やバスは止まり、唯一の商店は閉じられ、小学校や分校が閉鎖され、休耕田が放置され、集落が消滅寸前になっています。一部の地域ではこれが現実ですが、少子化が進んで行く日本の衰退の姿の一面ではないでしょうか。

 1990年代の半ばに、日本で少子化対策が叫ばれ出し、それ以降30年間に色々な対策が実施されましたが、現在でも出生数の減少は続き、少子化の勢いは続いています。高齢者の死亡数の増加と合わさり総人口が急激に減少しています。この事態に対して岸田総理が異次元の少子化対策を行うと発表し、少子化をストップしようとしています。少子化は日本の根幹を揺るがす恐れがあるからです。

 一方、少子化による人口減少は良いことだとの見方もあります。人が減ればエネルギー・資源・食料の消費量が減ります。資源・エネルギーの無い日本は外国依存のリスクが低下し、エネルギー消費の減少はCO2の発生を減らし、地球環境への負荷が減り、過密や混雑が防がれ、国土や各種施設をゆったりと使えます。労働力不足はロボット化やIT化や新技術の開発で補えばよいとする見方です。

 しかし上の見方は、現在の日本に適用できません。日本はすでに少子化により若年人口が急激に減り、高齢者人口が増大した歪んだ人口構成になっています。その結果、各方面の寂れの弊害が進行しています。農漁村や離島の過疎化が進み、食料の自給率が低下し、地方の小学校が消え、自衛官への応募が減り、世界に通用する学術論文が減り、産業や商店が衰え、税収が減り、高齢者支出が増え、国の赤字が膨らんでいます。少子化は出生数・若年人口・労働人口の減少と長寿命化による高齢者人口割合の増加とが相まって、色々な形で深刻な負の影響を及ぼしています。

 ここでは、日本の少子化の実態とその影響をできるだけ広範囲に把握し、少子化をもたらしている原因を探求し、日本人が均しく幸せになれる対策を考えて提言したいと思います。


【 目 次 】


1.少子化による42年後の姿
 1.1. 少子化の現状と推計
 1.2. 少子化の始まりとその原因
 1.3. 少子化は今後20~30年続く
 1.4. 農業従事者の危機的な減少と老齢化
 1.5. 水産業と漁業従事者の減少も危険ゾーンへ
 1.6. 小学生児童数と小学校数の哀れな減少
 1.7. 学術論文数の推移が示す日本の衰退
 1.8. 日本学術会議へのお願い
 1.9. 日本は突出した人口減少国
 1.10. 日本産業の衰退
 1.11. 国防力の弱体化とその防止
 1.12. 働く人の負担増
 1.13. 現在の50歳以下の日本人の運命
 1.14. 日本の舵取りをしている方々へのお願い

2.結婚できない非正規従業員
 2.1. 婚姻数の減少
 2.2. 非正規職員・従業員が結婚できない理由
 2.3. 最低賃金と生活保護
 2.4. 非正規雇用労働者の実情
 2.5. 非正規の職員・従業員になった動機
 2.6. 地方公務員の非正規雇用の実態
 2.7. 非正規労働制度の始まりと関連法
 2.8. 企業の内部留保と非正規雇用労働者
 2.9. 国際的な賃金とGDPの比較
 2.10. 非正規雇用者への差別待遇の禁止
 2.11. 日本の舵取りをしている方々へのお願い

3.長時間労働による出会い機会の減少

 3.1. 35歳以上での未婚率の増加
 3.2. 独身でいる理由
 3.3. 長時間残業の実態
 3.4. 労働基準法の時間外労働時間の規定
 3.5. 長時間残業をする状況の実態
 3.6. 残業は無くせる
 3.7. 結婚相手として適当な人に巡り合えるために
 3.8. 日本の舵取りをしている方々へのお願い

4.結婚したがらない人々
 4.1. 結婚しない理由
 4.2. 結婚に対する意識
 4.3. 晩婚化の推移
 4.4. 結婚年齢と生涯不妊率との関係
 4.5. 母の年齢が上がると子供の健康に影響する
 4.6. 不妊や染色体異常の原因は男性にもある
 4.7. 不妊治療の結果とその費用
 4.8. 結婚・出産しにくい女性の総合職と専門職
 4.9. 日本の舵取りをしている方々へのお願い

5.離婚者の累積
 5.1. 離婚数の推移
 5.2. 年齢階層別の離婚数の推移
 5.3. 就業形態による離婚率の差異
 5.4. 離婚しなければ生まれたであろう子供の数の推計
 5.5. 離婚を減少させることは可能か
 5.6. 離婚原因となる利己主義の生成原因
 5.7. 日本の舵取りをしている方々へのお願い

6.女性が子供を産む数の減少
 6.1. 出生数と死亡数と自然増減の推移
 6.2. 結婚件数の推移
 6.3. 合計特殊出生率の推移
 6.4. 希望する子供数
 6.5. 子供を生まない理由
 6.6. 出産できる年収
 6.7. 児童手当
 6.8. 夫の家事・育児の重要性
 6.9. 日本の舵取りをしている方々へのお願い

7.長寿命化の影響
 7.1. 日本の平均余命の推移
 7.2. 生命表を見る
 7.3. 定年退職制度
 7.4. 高年齢者雇用安定法とその改正法
 7.5. 高齢者の定義
 7.6. 世界の主要国の年齢別人口割合と高齢化率
 7.7. 世界主要国の一人当たりのGDPの推移
 7.8. 60歳以上の者の暮らし向き
 7.9. 高齢期の健康状態
 7.10. 高齢化の社会保障費給付に対する影響
 7.11. 高齢者はこれまでの日本発展の功労者です
 7.12. 高齢関係支出の実態
 7.13. 日本の舵取りをしている方々へのお願い

8.これまでの少子化対策
 8.1. 少子化対策への取組の開始
 8.2. これまでの取組のフローチャート
 8.3. 各種プラン・指針・構想などの決定
 8.4. 少子化社会対策会議の決定
 8.5. 閣議決定
 8.6. 法律の制定と実施
 8.7. 少子化社会対策大綱
 8.8. 施策の具体的内容
 8.9. 少子化対策の阻止に関して
 8.10. 施策に関する数値目標
 8.11. 日本の舵取りをしている方々へのお願い

9.少子化対策の費用と国家財政
 9.1. 令和4年度少子化社会対策関係予算の概要
 9.2. 令和5年度当初予算の概要(こども家庭庁)
 9.3. こども家庭庁は少子化対策をなぜ行わないのか
 9.4. 日本の歳入にみる問題点
 9.5. 国民の所得増による一般会計歳入への影響
 9.6. 海外投資による貧富の差に拡大
 9.7. 一般会計歳出の国債費について
 9.8. 日本の舵取りをしている方々へのお願い

10.少子化対策の要点
Ⅰ.出生数の減少を止める対策
 10.1. 「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の改定
 10.2. 最低賃金法の改定
 10.3. 労働基準法の改定
 10.4. 雇用機会均等法・男女共同参画社会基本法の見直し
 10.5. 児童手当法の修正
 10.6. 教育基本法の見直し
 10.7. 産業政策の見直しの必要性
 10.8. 法人税と所得税の見直し
 10.9. 消費税率の引き上げ
 10.10. 少子化対策の突破口を開く
Ⅱ.今後長期間続く人口減少時代への対処
 10.16. 日本の舵取りをしている方々へのお願い

おわりに