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1.2. 少子化の始まりとその原因

 出生数の減少は、「図1—2日本の出生数の推移」に見るように、1974年のピークを過ぎた時から始まり、その後は比較的穏やかに出生数が減少していますが、これは第一次ベビーブームで生まれた女性が出産適齢期となって、1974年に第二次ベビーブームを起こしたのです。この女性たちが出産後、社会進出してゆき、図1—6の様に共働き世帯が主流となりました。

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 図1—6を見ると、1980年に比して40年後の2020年には共働き世帯が約2倍に増えています。女性が専業主婦から脱して社会へ出始めたのです。
 少子化の始まりは第二次ベビーブームを起こした女性たちが出産適齢期を過ぎ、それと同時に共働き世帯の増加が出生数の減少の第一の理由とみて大きな間違いはないと思われます。
 第二の理由は、経済環境の悪化だと思われます。1990年過ぎ頃から、日本の企業ではリストラの嵐が吹き荒れました。この結果、多くの人が企業を追われ、職を失いました。生活の先行き不安が出産を躊躇させ、少子化へと進んだ要因だと思います。失われた30年と言われる1990年以降の経済的な停滞は多くの人に出産を思いとどまらせたと思われます。
 日本のGDPは約30年前の1992年頃から成長が止まり、図1—7のように数値がほぼ横ばいになっています。この停滞の30年と出産数の減少は関連があると思われます。GDPの停滞は、各家庭での収入の停滞でもあり、お金のかかる出産と育児を控えさせたのです。

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 第三の原因は、多くの人々の貧困化です。失われた30年の中で、非正規雇用形態が広く採用されるようになり、この人たちはワーキングプアーと言えるほどの低賃金で働いています。この状態では、結婚も出産も出来ません。
 第四の原因は、若い男性の長時間労働です。結婚相手と巡り合うチャンスも持てないほど深夜残業を含んで長時間拘束されている人が多くいます。もし結婚出来ても家で家事や子育てをする時間が無く、妻に負担が集中するので出産を思いとどまらせています。
 第五の原因は、価値観の多様化です。結婚し子供を生むよりも、自由に娯楽や趣味を楽しみたいとする人々が増えています。また、結婚しても子どもは欲しくない人も増えています。
 第六の原因は、男女同権思想のもとに、優秀な女性を総合職や専門職・技術職として男性と全く同一の深夜勤務を含む長時間残業や転勤を要求して働かせていることです。子供を生めるのは女性だけしかできない厳然とした事実を無視して厳しい勤務形態を認めている法律とそれに便乗している企業・組織などの存在です。このため、結婚するチャンスを逃がし、子供を持てない優秀な女性が増えているようです。
 第七の原因は、出産適齢期の人たちの離婚数の増加です。せっかく結婚しても色々な理由により、離婚すれば子供が生れなくなります。
 まだ他にも出産数を減少させる原因はあると思いますが、以上思いつくまま記しました。