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1.3. 少子化は今後20~30年続く

 ここで注意すべき事項は、今年の出生数は現在の出産可能期の女性の人数で制限されていることです。2023年時点で少子化をストップして合計特殊出産率を高め得たとしても、その出産をしたのは2023年時点で出産可能期の女性です。出産可能期を出産適齢期と見れば、その人数は図1—8の20~30歳の範囲の女性の数になります。

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 図1—8に見るように、女性の人数は若くなるに従って減少しています。出産適齢期の女性の人数はこの図に従って毎年1年ずつ若い方へシフトします。すなわち来年の出産適齢期の女性の人数は、図1—8の19~29歳の女性になります。20年後には図1—8の0~10歳の女性が出産適齢期に成るのです。
 今年の少子化対策が功を奏して合計特殊出生率を2020年の1.33より大きくできたと仮定しても、来年以降の合計特殊出生率をそれより大きくできない限り出産数が減少します。それは女性の数が年々減少しているからです。2023年の合計特殊出生率を次年度には上回らない限り出産数は年々減少します。合計特殊出生率を一定として一つの試算をすれば、2023年の出産数を100として、10年後には84になり、20年の後には76.7になります。この数値は図1—8の25歳・15歳・5歳の女性の人数比から算出しました。日本は少子化対策が成功しても、今後20年間、場合によっては30年間、合計特殊出生率を年々高めないと、出生数は減少し続けます。
 したがって、日本は今後20~30年間、少子化の進展を前提とした施策が全ての面において求められているのです。
 なお、上の記述では女性の出産適齢期を20~30歳としましたが、20~35歳にしても良かったかもしれません。あえて上限を30歳にしたのは、30歳まではダウン症や染色体異常を持った子が生れる頻度が低く、それまでに出産を終えるのが望ましいからです。