2.3. 最低賃金と生活保護
非正規雇用労働者(職員・従業員)と言われる人は、最低賃金かその少し上の賃金で働く場合が多く、最低賃金は非正規雇用労働者(職員・従業員)の基準賃金的な面があるようです。
その最低賃金は最低賃金法で次の規定があります。
最低賃金は都道府県ごと決められていて、一番低い最低賃金の県は青森・宮城・秋田・愛媛・高知・佐賀・長崎・宮崎・沖縄県で2022年10月から31円上乗せされて853円/時間となり、高い順位は1時間当たり東京1072円、神奈川1071円、大阪1023円、埼玉987円、愛知986円、千葉984円です。他の道府県はその中間の値です。
図2—4によれば、25~29歳で年収150~199万円の人(図の赤色)は10%しか結婚出来ていません。200~249万円の年収でも結婚できているのは15%です。これでは、「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができる」賃金とは言えません。結婚もできない生活レベルは健康で文化的とは言えないからです。
その最低賃金は最低賃金法で次の規定があります。
(地域別最低賃金の原則)上記のように、最低賃金の原則は、生活保護の施策(支給金額?)と矛盾せずほぼ一致することが、法律で定められています。すなわち最低賃金法は、働く人を被生活保護者並みの生活に抑え込むための法律であると言えます。
第9条 賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(一定の地域ごとの最低賃金をいう。以下同じ。)は、あまねく全国各地域について決定されなければならない。
2 地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。
3 前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。
最低賃金は都道府県ごと決められていて、一番低い最低賃金の県は青森・宮城・秋田・愛媛・高知・佐賀・長崎・宮崎・沖縄県で2022年10月から31円上乗せされて853円/時間となり、高い順位は1時間当たり東京1072円、神奈川1071円、大阪1023円、埼玉987円、愛知986円、千葉984円です。他の道府県はその中間の値です。
図2—4によれば、25~29歳で年収150~199万円の人(図の赤色)は10%しか結婚出来ていません。200~249万円の年収でも結婚できているのは15%です。これでは、「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができる」賃金とは言えません。結婚もできない生活レベルは健康で文化的とは言えないからです。
また、最低賃金法では、図2—5のように最低賃金の対象を定義しています。非正規雇用労働者の場合は、図2—5の白い枠内の給与・賞与・手当などは支払われない場合が多いために低収入になっている可能性があります。
いずれにしても最低賃金で働く人や非正規雇用労働者の年収は極めて低く、これは日本として少子化対策を政府の最重点課題とする場合の大きな障害であると言えます。
最低賃金法は生活保護に係る施策との整合性に配慮して決められています。そこで、最低賃金で働いた場合と生活保護を受けている場合との収入の比較をしてみました。
生活保護制度は複雑ですが、「教えて生活保護」の「生活保護の支給額っていくら?最低生活費の計算方法」 (saimu4.com)に従って、次の二つの家庭を想定して計算しました。
いずれにしても最低賃金で働く人や非正規雇用労働者の年収は極めて低く、これは日本として少子化対策を政府の最重点課題とする場合の大きな障害であると言えます。
最低賃金法は生活保護に係る施策との整合性に配慮して決められています。そこで、最低賃金で働いた場合と生活保護を受けている場合との収入の比較をしてみました。
生活保護制度は複雑ですが、「教えて生活保護」の「生活保護の支給額っていくら?最低生活費の計算方法」 (saimu4.com)に従って、次の二つの家庭を想定して計算しました。
◦東京在住、1歳児+33歳母(労働収入なし)
・生活扶助:26,660円+38,430円=66,090円
・逓減率:0.885→66,090円×0.885=58,489円
・生活扶助費第2類:50,180円
・母子家庭加算:22,790円
・住宅扶助2級地:45.000円
・教育扶助:0円
・合計支給月額:176,459円
・年間支給総額:2,175,088円
・生活扶助:26,660円+38,430円=66,090円
・逓減率:0.885→66,090円×0.885=58,489円
・生活扶助費第2類:50,180円
・母子家庭加算:22,790円
・住宅扶助2級地:45.000円
・教育扶助:0円
・合計支給月額:176,459円
・年間支給総額:2,175,088円
◦東京在住、中学生+42歳父(障碍者1級)+40歳母(労働収入なし)
・39,170円+39,360円+38,430円=116,960円
・逓減率:0.835→116,960円×0.835=99,661円
・生活扶助費第2類:59,170円
・障碍者1級加算:26,310円
・住宅扶助2級地:45.000円
・教育扶助中学校:4180+4330=8,513円
・合計支給月額:238,654円
・年間支給総額:2,863,848円
・39,170円+39,360円+38,430円=116,960円
・逓減率:0.835→116,960円×0.835=99,661円
・生活扶助費第2類:59,170円
・障碍者1級加算:26,310円
・住宅扶助2級地:45.000円
・教育扶助中学校:4180+4330=8,513円
・合計支給月額:238,654円
・年間支給総額:2,863,848円
上の生活保護の支給総額は、東京で生活するために必要な最低限の費用を基礎にして決められているものと推測されます。
一方、2022年度の最低賃金は大幅に引き上げたと騒がれましたが、1時間当たり853円でフルに働いた場合の年収は次の通りとなります。
一方、2022年度の最低賃金は大幅に引き上げたと騒がれましたが、1時間当たり853円でフルに働いた場合の年収は次の通りとなります。
853円/時間×8時間/日×25日/月×12カ月/年=2,047,200円/年
日本の最低賃金は年間フルに働いても年収は約204.7万円であり、手取り金額は各種税金などを差し引くとさらに低くなり、結婚できにくい極めて低いレベルに設定されています。
東京の場合でも1時間1,072円で、1日8時間、月25日、年間12カ月働いた場合で、年収は2,575,200円です。色々な事情で労働時間や日数が減れば、この金額はさらに少なくなります。非正規雇用労働者の年収が150~200万円と言われるのはこのためです。次に両者を比較して見ます。
東京の場合でも1時間1,072円で、1日8時間、月25日、年間12カ月働いた場合で、年収は2,575,200円です。色々な事情で労働時間や日数が減れば、この金額はさらに少なくなります。非正規雇用労働者の年収が150~200万円と言われるのはこのためです。次に両者を比較して見ます。
◦東京在住生活保護、1歳児+33歳母、年間支給総額;2,175088円
◦東京在住生活保護、中学生42歳父40歳母、年間支給総額;2,863,848円
◦東京在住最低賃金、8時間、25日、12カ月勤務の手取り;1,973,085円
◦地方在住最低賃金、8時間、25日、12カ月勤務の手取り;1,600,671円
◦東京在住生活保護、中学生42歳父40歳母、年間支給総額;2,863,848円
◦東京在住最低賃金、8時間、25日、12カ月勤務の手取り;1,973,085円
◦地方在住最低賃金、8時間、25日、12カ月勤務の手取り;1,600,671円
上の手取り金額は、東京在住者が最低賃金で1年間フルに働いた年収2,575,200円、地方在住者の年収2,047,200円を、「表9—2 年収と所得税・住民税・社会保険料の早見表」の年収に応じた手取り金額を用いました。最低賃金で働く場合、1時間でも働く時間が減れば、それだけ手取りが減ります。
最低賃金で生活する場合、一生懸命フルに働いても、全く働けない被生活保護者の受給金額より低くなっています。この不条理は認められません!
この不条理な最低賃金は誰がどのように決めているのでしょうか。最低賃金は最低賃金法によりその決定の仕方が規定されています。それによると、中央最低賃金審議会から示される引上げ額の目安を参考にしながら、各都道府県の地方最低賃金審議会で、その地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により決定されることになっています。
しかし、2022年の最低賃金の決定過程を見ていると、実質的には「中央最低賃金審議会から示される引上げ額」の目安が決定的に重要であり、地方はその引き上げ額をそのまま自分の地域に適用する決定をしただけのようです。
その中央最低賃金審議会は厚生労働省におかれ、その委員は政令で定めるところにより、地方と同様に労働者を代表する委員、使用者を代表する委員及び公益を代表する委員各同数で構成されています。
最低賃金で生活する場合、一生懸命フルに働いても、全く働けない被生活保護者の受給金額より低くなっています。この不条理は認められません!
この不条理な最低賃金は誰がどのように決めているのでしょうか。最低賃金は最低賃金法によりその決定の仕方が規定されています。それによると、中央最低賃金審議会から示される引上げ額の目安を参考にしながら、各都道府県の地方最低賃金審議会で、その地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により決定されることになっています。
しかし、2022年の最低賃金の決定過程を見ていると、実質的には「中央最低賃金審議会から示される引上げ額」の目安が決定的に重要であり、地方はその引き上げ額をそのまま自分の地域に適用する決定をしただけのようです。
その中央最低賃金審議会は厚生労働省におかれ、その委員は政令で定めるところにより、地方と同様に労働者を代表する委員、使用者を代表する委員及び公益を代表する委員各同数で構成されています。
「2022年7月12日 令和4年第2回目安に関する小委員会 議事録」を見ると、そこでは「現在の最低賃金は絶対額として最低生計費をまかなう水準として十分ではない」、「単身でも生活できないといった結果が出ており、現在の最低賃金の水準は、これをも下回っている」との認識が労働者を代表する委員から提示されています。しかし、結婚できる水準に引き上げるべきとの考え方や発言は誰からも何処にもありません。そして結果としては相変わらず単身でも生活できない水準の最低賃金になっています。
この2022年に決定された賃金は、最低賃金法の第1条の規定に違反していると思われます。
この2022年に決定された賃金は、最低賃金法の第1条の規定に違反していると思われます。
その違反理由は、次の二つです。その第一は単身でも生活できない賃金を「労働者の生活の安定」させる水準とは言えないからです。違反理由の第二は生きるのが精一杯の賃金は、最低限の消費しかできないので、最低賃金で生活する多くの人の存在は、日本の国内消費を低迷させ、それに関連した多くの商店や企業の業績の低迷となり、日本の「国民経済の健全な発展に寄与」せず、逆に国民経済の発展を阻止していると言えるからです。(目的)
第1条 この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
その上、現在の最低賃金では単身でも生活にできないので、結婚も出来ず子供も生めません。この最低賃金は少子化を推進する賃金でもあります。
上に記したような最低賃金法違反を指摘し、これの解消を政府に迫る第一の責務は与野党の政治家である国会議員にあります。政治家である国会議員は国民の安定した生活を護るために高給を受給しているはずだからです。
その上で、具体的に生活し結婚できる水準まで賃金を引き上げる絶対的な責務は、中央最低賃金審議会にありますが、この審議会は「現在の最低賃金は絶対額として最低生計費をまかなう水準として十分ではない」との労働者代表が提示する実情を無視して最低賃金を決めています。労働者の生活の安定もできない違法な決定をする中央最低賃金審議会に対して最低賃金法は罰則の対象外としています。この違法がまかり通る最低賃金決定の仕組みとその運営の改善に関与できるのは、与野党の政治家による国会の審議だけです。しかし、現時点では最低賃金法の改定と、違法行為追求の動きはないようです。この政治家の不作為の罪を誰が追求できるのでしょうか。それは国民の世論しかありません。
上に見たように非正規雇用労働者の生活困難解消と、少子化阻止の重要な事柄を、与野党の政治家と中央最低賃金審議会と厚生労働省が負っているはずです。しかし、審議会の議事録を見ると委員の方々には、自分たちの決定が多くの非正規雇用労働者の生活と少子化に決定的に関与しているとの認識は無いようです。与野党の政治家も同様です。
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