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2.7. 非正規労働制度の始まりと関連法

 このような差別社会になる雇用制度は誰が何時頃創ったのでしょうか。そしてどのような経過をたどったのでしょうか。
 労働力人口(非正規割合の推移) ~増える非正規、変わる非正規~ – 組織・人事コンサルティングの株式会社トランストラクチャ (transtructure.com)に2021年1月26日付の図が有りましたので、図2—13として引用させてもらいます。


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 この図2—13を見ると、昭和60年(1985年)には非正規労働者であるパートやアルバイトの人は存在せず、1986年からパート・アルバイト・その他の地位の人が記録上に現れてきています。そして令和2年(2020年)には非正規雇用労働者の割合は全労働者の約40%近くになっています。図2—13によると平成12年(2000年)から派遣社員が姿を現し、平成14年(2002年)から契約社員が出てきています。
 このように、労働者の賃金を安く抑えるための契約社員・派遣社員・嘱託などの非正規雇用形態が考えられ採用され現在に至っています。これらの新しい雇用形態は、企業にお金を貯め、労働者を窮乏化し、日本を停滞させ、貧富の差を拡大し、少子化を促進しました。これは政治家と政府と企業や組織体が結託して、自己の利益を増大させることだけを図った結果と思われます。
 本来、企業や地方自治体などの組織体にとって必要な業務に正規や非正規の区別はありません。あるのは臨時的な業務と恒常的な業務の差異です。しかし現在の多くの組織体は、恒常的な業務を非正規雇用者に行わせて人件費を低く抑えている実態があります。
 非正規雇用制度は企業などの組織体が人件費を安くするために、誰かが創り出した人為的な制度であり、改変可能なものと言えます。
 非正規雇用に関しては厚生労働省のWEBに、「非正規雇用に関する主な法令等」に「有期労働契約」、「パートタイム・有期雇用労働」、「労働者派遣」の法規が紹介さています。
 それによると、有期労働契約は「労働契約法」により規定され、労働者と使用者との自主的な交渉で労働契約が対等の立場で、仕事と生活の調和に配慮して合意されたことにより成立するものです。この法律は平成19年(2007年)法律第百二十八号として制定されています。
 パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイム・有期雇用労働者に対する労働条件の文書による明示と、正社員との間の差別待遇の禁止と、正社員への転換の推進が規定されています。パートタイム・有期雇用労働法は平成5年((1993年)法律第76号として制定さ、2020年4月に改正されています。
 労働者派遣関連の法律には、労働者派遣法、労働者派遣法施行令、労働者派遣法施行規則があり、正式な法律名は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」となっています。この法律は労働力の需給の調整を図るためと、派遣業事業の適正な運営、および派遣労働者の保護を図ることを目的としています。労働者派遣法は昭和60年(1985年)法律第88号として制定されています。最初の非正規雇用制度は38年前から始まっていました。この法律は1986年に施行後、1996年~2007年間に6度の改正が行われ、派遣対象業務の範囲が順次拡大され、その後も改定を繰り返して運用されています。
 非正規雇用に関しては上の三つの法令に加えて「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」があります。
これ等の法律では、いずれも労働者の保護と差別待遇を禁止していますが、現実にはこれらの法律に準拠して雇用された労働者(非正規雇用労働者)は正規労働者(正社員)と比して2分の1から3分の1の年収の酷い差別待遇を受けています。労働者の保護を謳っているこれらの法令により、多くの人が低賃金で苦しめられています。
 少子化対策の優先課題はこの不条理な非正規雇用労働者に対する差別待遇の人たちの年収を、結婚出来るレベルを引き上げることが急務であると言えます。そしてこの人たちに対する差別待遇を解消する主たる責務は、雇い主である企業・自治体・官庁などの組織体にあり、次の責務は不条理な差別待遇の改善を支援し監視する立場の政府特に厚生労働省と、結婚もできない低賃金を引き上げ労働の公平性を保ち労働者を保護する役目の労働組合とその上部組織の労働団体にあると思います。
 多くの日本の労働組合は正社員だけで構成され、非正規雇用労働者を自己の組織から排除して保護しようとしていません。労働組合は自己保身を図り、非正規雇用労働者を受け入れないことにより、会社や地方公共団体などの賃金を支払う側におもねって、非正規雇用労働者への差別待遇を認めているのです。日本には労働組合とその上部団体から排除された非正規雇用労働者を守る団体や組織がどこにも存在していません。そのため、雇う側は平然と非正規雇用労働者を酷い低賃金で酷使することができているのです。労働組合のこの姿勢が低賃金による日本の貧困化をもたらしています。労働組合の非正規雇用者に対する責任は大きいと思います。
 その上、この不条理な差別を本質的に制度として無くすべき責務は、国民を平等に処遇にして不当な事柄を無くすために高給を得ている与野党の政治家・国会議員にあると思います。差別待遇により貧困に陥っているこの人たちを救済して少子化などを防ぐ責務を放棄している政治家・国会議員の不作為の罪は免れ得ないと思います。