2.9. 国際的な賃金とGDPの比較
図2—19はOECDのデータから作られたものです。日本の多くの人は、韓国人は日本人より低収入と思っていますが、2016年以降は韓国の労働者よりも日本の労働者の年収が低くなっており、その差が年々拡大しています。
次に各種世帯の1世帯当たりの平均所得の推移を見ると図2—20の通りです。
次に各種世帯の1世帯当たりの平均所得の推移を見ると図2—20の通りです。
図2—20の全世帯の平均所得(下から2番目の線)で見ると、1994年の664.2万円から2018年には564.3万円へと約100万円も低下しています。
図2—18、図2—19、図2—20を見ると、優秀な人材は日本から逃げ出す可能性が高く、あるいはすでに逃げ出しているかもしれず、日本は知的な最先端の文化的・科学的・技術的研究の面でも、世界で後れを取る条件が整っています。
すでに若者がオーストラリアで仕事をすれば、日本と同じ仕事で日本の1.5~2倍の収入になるので、もう日本には帰らないとの情報が流されたりしています。これ等の図を見れば、日本企業は賃金を大幅に引き上げ、諸外国に劣らないレベルの給与にしなと、優秀な人材を採用できなくなります。
優秀な人材は企業にとって宝です。優秀な人材は企業の存続と発展の基礎です。これからの日本企業は今まで世の中になかった新技術や新製品を開発し、新システムで仕事を効率的に行い、世界の中で生き残り発展しなければなりません。このためには、人材を大切にしなければなりません。
しかし、現実には従来技術の延長線上から抜け出ることができなかった日本は、カラーテレビ・CD・DVDなどのデジタル技術で立ち遅れ、パソコンのOS(オペレーションシステム)は米国のマイクロソフトが開発して世界市場をほぼ独占し、スマートホンはアメリカの企業が開発して世界を席巻し、IT技術も日本は遅れており、最先端の半導体の開発設計生産分野では遅れを取り返せるか心配です。
人材を高く評価せず、賃金を引き下げ安い労働力で従来製品を安く造ることに集中してきた日本企業は、明らかに世界の趨勢から取り残され始めています。世界の主要国が大きく発展している中で、日本のGDPだけが30年間ほとんど成長せず横ばいを続けていることが、日本の政財界挙げての低賃金政策が誤りであったことを示しています。
図2—21では日本の実質GDPは2000年を基準として少し伸びていますが、本書の図1—7によれば、日本のGDPは1993年のGDP4,544.77B$から2022年の4,300.22B$へと30年間全く成長せず、逆に少し減少しています。
図2—18と図2—21の類似パターンを対比して見れば、賃金上昇とGDPの成長が密接に関連していることが、直感的に理解できます。すなわち1人当たりの年収を増やすことはGDPを成長させることにつながることが見て取れます。
この図2—18と図2—21の図を対比することで、結婚も出産できない低年収の人の賃金を大幅に引き上げることは、日本の経済成長(GDPの成長)を促し、少子化対策の基礎にもなることが解かります。
一方、2023年の日本の賃金引き上げの動きを見ていると、連合の要求は物価上昇を上回る5%以上が目標になっています。しかし、「図2—18 1人当たり実質賃金の伸び率の国際比較」によれば、欧米の主要国に対して2018年時点で30~40%の賃金差があり、現在はその差はもっと拡大していると想定されるので、そのことを労使ともに賃上げに当たって考慮に入れる必要があると思います。
最低賃金で働いている場合は、10%の引き上げが行われても、手取り160万円が176万円になるだけで、結婚出来るレベルには程遠いと言えます。
一方、2023年の日本の賃金引き上げの動きを見ていると、連合の要求は物価上昇を上回る5%以上が目標になっています。しかし、「図2—18 1人当たり実質賃金の伸び率の国際比較」によれば、欧米の主要国に対して2018年時点で30~40%の賃金差があり、現在はその差はもっと拡大していると想定されるので、そのことを労使ともに賃上げに当たって考慮に入れる必要があると思います。
最低賃金で働いている場合は、10%の引き上げが行われても、手取り160万円が176万円になるだけで、結婚出来るレベルには程遠いと言えます。
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