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4.5. 母の年齢が上がると子供の健康に影響する

 また、齊藤英和医師は次のように指摘しています。

「母親の年齢が35歳以上になる頃から、明らかに生まれてくる子どもに染色体異常が出やすくなります。それ自体が病気というわけではありませんが、ダウン症などの何らかの染色体異常を持ちやすくなると言われています」。

 ダウン症の子が生まれる頻度は次のように母親の年齢が大きく影響している。すなわち、40歳以上で子供を生むとダウン症の子がうまれるリスクが高く成る。
 図4—7と図4—8を見ると、女性は子供を30歳までに望む数の出産を終える人生計画を立てることが、健全な子孫のために好ましいと言えます。

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資料:Hook EB(Obstetrics and Gynecology 58:282-285,1981)
Hook EB PK,Cross PK,Schreinemachers DM(Journal of the American Medical Association 249(14):2934-2038,1983)を元に母子保護課にて作成

 また、前記の「1.妊娠適齢年令」には、次のように記されています。
さらに卵子の質の低下(染色体数の異常)については35歳頃より数の異常な染色体の割合が上昇する。卵子、および精子のような生殖細胞は、減数分裂を2回繰り返すことで二価染色体を一価染色体として配偶子に分配し、受精によってその数を回復する。加齢による染色体数の異常の原因は、減数分裂の過程で正常に配偶子を分配できないことである。
 理化学研究所の報告によると、高解像度3Dライブイメージングを用いてマウスの加齢した卵母細胞の第一減数分裂の追跡解析をしたところ、二価染色体の構造を維持するのに必要なタンパク質であるコーヒチンが減少することにより、第一減数分裂において二価染色体の早期分裂や不分離が生じるためということを示唆している。

 減数分裂とは何かが分からないと、染色体異常がなぜ起こるのか分からないので、そのイメージを図4—9を載せ簡単な説明をします。

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 図4—9のように、父母の細胞が分裂して細胞の中の半分の染色体を持った卵子が母の体の中に、精子が父の体の中に作られます。
 これが減数分裂です。結婚によりこの卵子と精子が結合して子供が生まれるのです。この染色体の分裂と結合の過程で少しでも不具合があると、染色体異常となり、正常な子供が生まれなくなるのです。男女共に年齢の上昇にしたがってこの細胞の減数分裂で卵子と精子ができる過程とその結合の過程で異常な事態が起きやすくなるのです。
 自由気儘に過ごし、趣味や娯楽を楽しみ、仕事に打ち込み、まだ若いとの思いは25歳までにしておくべきです。そして30歳までに出産を終わらずに、30歳過ぎに結婚して35~40歳で子供を産もうとした時、不妊や染色体異常のリスクが高くなることを知っておくことが大切です。