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4.6.不妊や染色体異常の原因は男性にもある

 不妊や子どもの染色体異常は女性側の加齢だけが原因で引き起こされるわけではありません。実は男性の加齢もそれらの原因になり得るし、「流産や子どもの先天性異常に影響を及ぼす」として、流産に及ぼす父親の年齢の影響をグラフで示しています。
 図4—10の縦軸Xの単位(流産によるハザード比)の意味は、妊娠1,000人に対する流産の事故が起こる頻度です。父親の年齢と共に流産の率が高まっていることが分かります。

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 図4—10によれば、20歳の父親の場合と40歳の場合とでは、40歳の父親の場合は流産のリスクが20歳の場合に比して1.5倍になっています。流産は胎児に何らかの異常がある場合に生じやすいので、単に流産を防ぐ処置をすれば良い問題ではないと思われます。

「安易に子どもを持つタイミングを先送りしない方がいいと思います。このことは女性だけでなく、男性にも知っておいてもらいたい」

と、齊藤英和医師は指摘しています。
 日本産婦人科医会の「栗林先生・杉山先生の開業医のための不妊ワンポイントレッスン」の「1.妊娠適齢年令」には、次のように記されています。

男性の場合も加齢による精巣機能低下に伴い精液量、精子正常形態率、精子運動率が減少し、精子ⅮNAの損傷の割合も上昇することから、男性の年齢の上昇が妊孕能(にんようのう・妊娠させる能力)の低下や流早産率の上昇に寄与するといわれている。2000年の男性年齢と妊孕に関する疫学調査によると、25歳未満の男性を基準とすると35歳以上では一年以内に妊娠へ至る確率は1/2になると報告している。男性の場合は女性と異なり閉経という概念はないが、男性も年齢とともに妊孕能が低下することは明らかである。

 さらに、NHKのクローズアップ現代、2018年2月6日(火)放送の「男にもタイムリミットが!?精子“老化”の新事実~」において妊娠に関する男性側の問題点が記されているので、その要点を記します。

 WHOによると自然妊娠するには精液1ミリリットル中に精子が1,500万以上、その内活発に動くものが40%以上必要であり、検査結果は次の図4—11、図4-12の通りです。

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 図4—12に見られるように、損傷した精子が32.31%もあったのです。最新の研究で見た目が元気な精子でも、中身が老化していると言う事実が分かってきました。30代から老化に要注意とあります。
 以上は40代の男性のDNA検査の結果です。精子の濃度や運動率には大きな問題がありませんでしたが、損傷率は高く、30%を超えていました。

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 不妊の原因の半数が男性側にもあることが分かってきています。WHOの調査では、男性のみが原因の場合、そして男女両方が原因の場合がそれぞれ24%で合計48%となっています。