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4.8. 結婚・出産しにくい女性の総合職と専門職

 総合職や専門職と言われる職種の女性が日本の全産業分野で働いています。この女性の社会進出の基礎となる女性の大学進学の様子を見てみます。

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 図4—18に示すように女性の大学進学は1900年過ぎから急速に増えています。
女子大学生数は1950年の約2万5,000人が最少で、2019年の約129万人が最多です。男性の学生数を100とすると、女性の大学生数は73.7まで増えました。

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 女性が学んでいる分野が図4—19から分かります。一番多いのは社会科学で、次は人文科学、保健、教育、家政、芸術の順になっています。「社会科学」に分類される学問領域としては、経済学、経営学、法学、教育学、政治学、社会学、国際研究、コミュニケーションなどの分野が含まれ、「人文科学」は政治・経済・社会・歴史・文芸・言語など人類の文化全般に関する学問の総称です。
 この様に多くの大学卒業の女性が社会進出して、企業や各種団体・組織体などに入り、総合職・専門職・一般職として働いています。これを促進する法律が男女雇用機会均等法・男女共同参画社会基本法などの関連法の体系です。
 男女雇用機会均等法は1972年7月1日に制定され、最終改正が2017年6月2日に法律第四十五号として制定されています。最初の法律制定から既に50年が経過しています。ここでは女性の労働に関して次のように規定しています。

(目的)
第一条  この法律は、法の下の平等を保障する日本国憲法の理念にのつとり雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする。
(基本的理念)
第二条  この法律においては、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあつては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることをその基本的理念とする。
2  事業主並びに国及び地方公共団体は、前項に規定する基本的理念に従つて、労働者の職業生活の充実が図られるように努めなければならない。

 女性の就業を促進しかつ保護する法規や規定がありますが、女性の妊娠後・出産・育児・再就職などに関する規定だけで、結婚前・妊娠前及び母親になる前までの保護・尊重が規定されていません。
 総合職の女性は結婚し妊娠するまでは、深夜残業を含む長時間残業や転勤など男性とまったく同一に扱われているようです。その結果、総合職の女性は一般的に次の悩みを抱えていると言われています。

   ◦結婚しにくい(重要な多くの仕事を任され、それに専念するため)
   ◦転勤がある(東京勤務から九州勤務へ転勤の事例なども珍しくない)
   ◦残業が多い(男性並みに深夜残業や長時間残業も多い)
   ◦恋愛の時間とチャンスがない(自由な時間が取れない)
   ◦男性と同等に扱われない(ほぼ男性と同じ仕事でも待遇差がある)
   ◦一般職の女性に気を遣う(同年輩や先輩格の大学卒の一般職も多い)
   ◦社内に手本となる人がいない

 厚生労働省が行った令和3年(2021年)度雇用均等基本調査に、日本の企業における男女別の職種別の割合の図が有りましたので、図4—20と図4-21に示します。

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 図4—20に見るように、正社員の36.1%が総合職として働いています。予想以上に女性総合職の割合が高く成っています。

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 図4—21に見るように、全産業分野の企業の6.6%に総合職・一般職などのコース別管理制度があります。特に金融業・保険業と医療・福祉・複合サービス業でこの制度を導入している率が高く、製造業では低い採用率です。
 総合職の女性は結婚しにくいと言われており、就職後10年間で23~33歳の女性総合職のうち、結婚出来ていない人が多いようです。図3—2「2015年の年齢階級別に見た未婚率」で、30~34歳で34.6%、35~39歳で23.9%の女性が未婚ですが、この人たちは総合職・専門職・技術職として働いているために、結婚できずにいる人達が多いかも知れません。
 子どもを生めるのは女性だけです。そのために女性の体は男性と同じではなく、体力も男性より劣り、男性には無い生理現象があります。その上妊娠・出産には適齢期があり、これを逃すとダウン症や染色体異常の子が生れる頻度が高まり、遂には妊娠も出産も出来なくなります。
 これらのことを無視して、結婚前の女性に総合職の名の下に男性と完全に同じ深夜残業を含む長時間勤務や転勤を強いるのは、男女雇用機会均等法や男女共同参画基本法などの関連法規や指針などの大きな欠陥だと思います。これ等の関連法規や指針は、生物学的な明瞭な体と役割の男女の差異を無視しています。本来は男女の埋めることの出来ない差異を考慮の上、女性の参画や機会の均等を図るべきだと思います。完全な男女同一条件を結婚前・妊娠前の女性に強いることは、女性にとって男性よりも厳しい負担となります。この法規は、多くの女性総合職の人が結婚・出産適齢期を逃して、生涯独身への道を歩ませるものです。
 スポーツ界では男女が同じ場で同時に一緒に入り交じって行う競技は存在しません。テニスも卓球もバレーボールもサッカーも水泳も陸上競技もすべての競技が男女別々に行われています。誰もこのことを男女差別とは思っていません。一方、男女雇用機会均等法や男女共同参画基本法などは、結婚前・妊娠前の女性に対して、基本的な生物としての男女の差異を配慮していないのです。
 相手を見つけなければ結婚出来ず、結婚できなければ妊娠もせず、妊娠しなければ出産も出来ません。それは少子化促進へと繋がります。男女雇用機会均等法や男女共同参画基本法などの関連法規や指針などは、気に入った相手に出会い結婚し妊娠するまでの段階の女性に対する配慮の規定が完全に欠落している問題点を改定すべきではないでしょうか。
 総合職などの女性は難関大学を卒業した優秀な人が多いようです。優秀な母親からは優秀な子が生まれる可能性が高いと思います。総合職の優れた女性が仕事に集中して結婚・出産の適齢期を逃して生涯子供が持てない状態に成るのは、少子化の問題だけではなく、日本としても優秀な子供の生まれる数が減り日本人の質を低下させる損失と言えます。
 また、女性の専門職・技術職の人も、総合職の女性と同様に結婚しない(できない?)悩みがあるようです。

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 女性の専門職・技術職は内閣府・男女共同参画局により、図4—22のように整理されています。図4—22から女性の専門職・技術職の人々が日本の基礎の重要な部分を担っていることが分かります。
 この人たちにも、総合職と同様に結婚するチャンスを作れるだけの自由時間を持てるような法的な制度改革が必要ではないでしょうか。このためには誰が何をすべきなのでしょうか。
 その第一の責務は与野党の政治家や国会議員にあります。政治家は、総合職・専門職・技術職の女性に男女共同参画の名にもとに、深夜残業を含む長時間残業や転勤を男性と全く同じ状態で行うことを制限する提議や議決をして、法改正へと政府を動かす責務があると思います。政府はこの提議などに従って、男女雇用機会均等法や男女共同参画基本法などの関連法規や指針を見直し、総合職・専門職・技術職の女性に深夜残業などの過酷な負担を掛けることを制限し、結婚相手を見つけるために退職や転職をしなくて済むように法律を改定する責務があるのではないでしょうか。