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7.12.高齢関係支出の実態

 国立社会保障・人口問題研究所の「令和2年度 社会保障費用統計」によれば、高齢関係支出は1980年から2020年までの40年間にGDP比で3倍に増大しています。この関係を図7—19に示します。

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 高齢関係支出は図7—19に示す通り、1980年からの40年間にGDP比で3倍に増大しています。しかし、これは図7—20に示すように過去30年間日本のGDPが殆ど停滞していたことが大きく影響しています。

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 もし、アメリカの様に1980年から40年間に名目GDPが約7倍以上大きく経済成長していれば、逆に高齢化支出のGDP比は低下していたかも知れません。
 また、社会保障給付費の推移は図7—21の通りです。

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 2020年の高齢者に対する支出48兆7,975億円は、全社会支出(高齢・遺族・傷害・災害・傷病・保健・家族・積極的労働政策・失業・住宅・其の他)136兆3,600億円の35.8%を占めています。
 しかし、令和4年の財務省の国の歳出の社会保障費は36兆2,735億円しかありません。国立社会保障・人口問題研究所の「令和2年度 社会保障費用統計」よりも100兆円も少なくなっています。この差の100兆円は何処から支出されたのでしょか。
 社会保障給付金は国庫負担だけではなく、被保険者などの負担と、事業主の負担および他の公費負担・資産収入・その他があり、国の予算で負担するのは全社会保障費用の一部であることが分かりました。
 たとえば、2020年の社会保障費用の収入の事例で見ると次のようになっています。

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 すなわち、国の予算で負担するのは社会保障費の一部であり、多くの部分を被保険者や事業主が拠出していたのです。
 一方、2020年の支出の方をみると、次のようになっています。

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 国の歳出計画では社会保障費用の実態が解かりませんでしたが、国立社会保障・人口問題研究所のデータを見て解かりました。
 日本の社会保障費用は、国家の全歳出の約1.8倍にもなっており、その内高齢者向けの費用は年金だけで55兆2300億円も国家歳出額の半部以上も支払っていたのです。
 また、上に記した社会保障給付費の推移の図7—21を見ると、年々その費用が増大しており、日本は何時までこの社会保障費の急激な増大に耐えるのでしょうか。日本国民の一人として心配になります。
 誰が如何にしてこの日本を破綻に導く危険な兆候を安全な方向へと転換することが出来るのでしょうか。
 その責務は、与野党の政治家・国会議員と政府にあります。これまでに記してきた少子化対策を確実に実行し、年少者を増やし、若者を増やし、働く人を増やして、日本経済を活性化し、GDPを増大させ、その結果として所得税・法人税・消費税などの増加で、高齢関係支出を含む社会保障費を賄うべではないでしょうか。結婚も出産もできない労働者の賃金を大幅に引き上げて消費を増やし、企業の生産販売活動を活性化して、そして少子化を克服して人口減少による衰退を反転し、安定した経済発展を達成して、この年々増える負担の危機を克服すべきです。それ以外の方法はないと思います。