8.10. 施策に関する数値目標
上の図8—2の数値目標は実に細やかに全領域に亘って設定されており、少子化対策が幅ひろく着実に実行されており敬服します。
ただし、「結婚・妊娠・出産」の欄の「若い世代の正規雇用労働者の割合」(➡で指し示す)の目標値が「全ての世代と同水準を維持」となっており、「全ての世代の正規雇用労働者(自らの希望による非正規雇用労働者を含む)の割合」は95.8%と記されていますが、これは問題があります。
すなわち、若い世代の労働者を、すべての世代の正規雇用労働者(自らの希望による非正規雇用労働者を含む)の割合と同じ95.8%とすることが目標とされています。しかし、すべての労働者の95.8%が正規雇用であると記していますが、これは事実認識が誤っています。
ここでの問題は「自らの希望による非正規雇用労働者」を正規雇用労働者の範疇に含めていることと、正規雇用労働者に含まれない不本意非正規労働者を実態より大幅に少なく設定し、その上、正規と非正規との大きな賃金格差を無視していることです。次にその事実を記します。
2021年の正規雇用労働者は3,587万人で、非正規雇用労働者は2,075万人で、合計雇用労働者は5,662万人です。この5,662万人の95.8%(5,424万人)が正規雇用労働者(自らの希望による非正規雇用労働者を含む)であると「図8—2 施策に対する数値目標」は記しています。
ただし、「結婚・妊娠・出産」の欄の「若い世代の正規雇用労働者の割合」(➡で指し示す)の目標値が「全ての世代と同水準を維持」となっており、「全ての世代の正規雇用労働者(自らの希望による非正規雇用労働者を含む)の割合」は95.8%と記されていますが、これは問題があります。
すなわち、若い世代の労働者を、すべての世代の正規雇用労働者(自らの希望による非正規雇用労働者を含む)の割合と同じ95.8%とすることが目標とされています。しかし、すべての労働者の95.8%が正規雇用であると記していますが、これは事実認識が誤っています。
ここでの問題は「自らの希望による非正規雇用労働者」を正規雇用労働者の範疇に含めていることと、正規雇用労働者に含まれない不本意非正規労働者を実態より大幅に少なく設定し、その上、正規と非正規との大きな賃金格差を無視していることです。次にその事実を記します。
2021年の正規雇用労働者は3,587万人で、非正規雇用労働者は2,075万人で、合計雇用労働者は5,662万人です。この5,662万人の95.8%(5,424万人)が正規雇用労働者(自らの希望による非正規雇用労働者を含む)であると「図8—2 施策に対する数値目標」は記しています。
5,662万人×0.958-3,587=1,837万人
すなわち、1,837万人は「自らの希望で非正規雇用労働者になっている」と認識されています。この認識に従えば、不本意非正規雇用労働者は次の計算の通り238万人です。
(非正規雇用労働者2,075万人)-(1,837万人)=238万人
一方、総務省統計局の労働力調査の長期時系列データの2021年の実際の非正規雇用労働者2,075万人の内訳は次の通りです。
・パ ー ト:1.024万人
・アルバイト:439万人
・派遣社員 :141万人
・契約社員 :277万人
・嘱 託:113万人
・そ の 他:82万人
・アルバイト:439万人
・派遣社員 :141万人
・契約社員 :277万人
・嘱 託:113万人
・そ の 他:82万人
上の人々の中で、238万人(非正規雇用労働者の11.48%)だけが不本意非正規雇用労働者であると日本政府の少子化対策関係者は認識しています。しかし、不本意派遣労働者である派遣社員と契約社員の合計は418万人で、これに加え正社員と同じ仕事をしている嘱託とアルバイトの場合も自らの希望ではなく、不本意非正規雇用労働者になった人が多くいます。
その上、すでに本書の「2.結婚できない非正規従業員」で記したように、非正規従業員の調査対象の50%近くが不本意で非正規従業員になっています。2,075万人の50%の約1,037万人が不本意非正規従業員です。238万人ではありません。
また、非正規雇用労働者の内、何割が正規雇用者になりたいかを調べてデータがありますので、それを記します。「オフィスのミカタ (officenomikata.jp)」が2019年4月8日にWEB上に公開した『~非正規雇用者の6割以上は、正社員を希望~非正規雇用者約10,000人に聞いた、正社員就業に関する意識調査~』です。
その意識調査は、非正規雇用(アルバイト・パート、派遣社員、契約社員)で働いている人を対象に「正社員就業に関する意識調査」を行い、正社員希望者と正社員を採用したい企業、双方がマッチングするためのポイントを明らかにしたものです。その調査結果では、64.1%の非正規雇用労働者が正社員雇用になることを希望しています。その結果を図8—3として示します。
その上、すでに本書の「2.結婚できない非正規従業員」で記したように、非正規従業員の調査対象の50%近くが不本意で非正規従業員になっています。2,075万人の50%の約1,037万人が不本意非正規従業員です。238万人ではありません。
また、非正規雇用労働者の内、何割が正規雇用者になりたいかを調べてデータがありますので、それを記します。「オフィスのミカタ (officenomikata.jp)」が2019年4月8日にWEB上に公開した『~非正規雇用者の6割以上は、正社員を希望~非正規雇用者約10,000人に聞いた、正社員就業に関する意識調査~』です。
その意識調査は、非正規雇用(アルバイト・パート、派遣社員、契約社員)で働いている人を対象に「正社員就業に関する意識調査」を行い、正社員希望者と正社員を採用したい企業、双方がマッチングするためのポイントを明らかにしたものです。その調査結果では、64.1%の非正規雇用労働者が正社員雇用になることを希望しています。その結果を図8—3として示します。
調査対象はアルバイト・パート、派遣社員、契約社員を含んだ非正規雇用労働者10,000人です。その内64.1%、すなわち6,410人が正社員のなりたい希望を持っていました。6,410人の内68.8%すなわち4,410人は「隠れ不本意非正規」という結果でした。この調査をした「ディップ総合研究所」は「隠れ不本意非正規」とは、「なれるなら正社員になりたい人」と規定しています。正規雇用で就職する仕事がなかったとする不本意非正規とは別の理由で「正社員就職」に二の足を踏んでいる層のことを指しているとしています。その「隠れ不本意非正規」の「別の理由」として記されているのは次のような事項です。
・年齢が壁になり採用されなかった:23.4%
・経歴が不安・・・・・・・・・・:19.7%
・自分にできる仕事に自信が無い・:17.0%
・職場になじめるか心配・・・・・:16.2%
・経歴が不安・・・・・・・・・・:19.7%
・自分にできる仕事に自信が無い・:17.0%
・職場になじめるか心配・・・・・:16.2%
などを挙げています。
この資料から、64%の非正規雇用労働者はなれるものなら正社員になりたいと希望していることが分かります。そして2021年の非正規雇用労働者2,075万人の64.1%、すなわち1,330万人は正規雇用で正社員になることを希望しています。238万人ではありません。
したがって、政府の少子化対策の関係者の認識は間違いであると言えます。間違いでないとすれば、何らかの意図で不本意非正規雇用労働者の数を非常に少なく規定したのもかもしれません。なぜこのような誤りがまかり通っているのでしょうか。これは誰の責任なのでしょうか。
この資料から、64%の非正規雇用労働者はなれるものなら正社員になりたいと希望していることが分かります。そして2021年の非正規雇用労働者2,075万人の64.1%、すなわち1,330万人は正規雇用で正社員になることを希望しています。238万人ではありません。
したがって、政府の少子化対策の関係者の認識は間違いであると言えます。間違いでないとすれば、何らかの意図で不本意非正規雇用労働者の数を非常に少なく規定したのもかもしれません。なぜこのような誤りがまかり通っているのでしょうか。これは誰の責任なのでしょうか。
日本の5,662万人の雇用労働者の95.8%(2021年で5,424万人)が正規雇用労働者(自らの希望による非正規雇用労働者を含む)であるとの政府の少子化対策関係者の認識が、少子化対策の基本を誤らせ、少子化の進行が止まらない一つの重要な要因であるかもしれません。この認識に従えば不本意非正規雇用労働者は4.2%であり、日本の根幹にかかわる問題との認識は生まれてきません。
なぜこのような誤った認識が生まれたのでしょうか。何処にも不本意非正規雇用者が雇用労働者の4.2%であるとの数値は見つかりません。少子化対策の数値目標を作成し、それを承認した人たちは、不本意非正規労働者は4.2%である根拠を示す義務があります。
見方によれば、雇用形態に拘らない公正な待遇の確保と長時間労働の是正への取組の必要性が無いように見せかけて、この問題への取り組みを避けるための誰かの策略とも見えます。この数値目標はどの部門の誰が策定して誰が承認したのでしょうか。あまりにも現実と離れた数値目標です。
また、少子化対策・施策の成果を計る重要な数値目標として、「正規雇用労働者の割合」だけではなく、「結婚希望実現指数」や「夫婦子ども予定実績指数」などの指数が数値目標として掲げられています。しかし、結婚組数の増加や子供の出生数の増加数、離婚数の低下、長時間労働の減少、など少子化対策の大切な直接的な多くの目標数値の設定が必要と思われますが、「施策に関する数値目標」ではこれらの重要な数値目標がありません。
少子化を止めるのは、「出生数の増加」あるいは「合計特殊出生率2.07」だけであり、各種の指数ではありません。少子化対策の最も重要な出生数の目標値と合計特殊出生率の目標値と達成目標期日が少子化対策の目標数値から漏れています。
なぜでしょうか。
少子化対策の目標数値を決める責務は誰に在るのでしょうか。少なくとも時の政府の少子化対策担当大臣は少子化対策としての目標数値を決定する権限と責任があるはずです。
なぜこのような誤った認識が生まれたのでしょうか。何処にも不本意非正規雇用者が雇用労働者の4.2%であるとの数値は見つかりません。少子化対策の数値目標を作成し、それを承認した人たちは、不本意非正規労働者は4.2%である根拠を示す義務があります。
見方によれば、雇用形態に拘らない公正な待遇の確保と長時間労働の是正への取組の必要性が無いように見せかけて、この問題への取り組みを避けるための誰かの策略とも見えます。この数値目標はどの部門の誰が策定して誰が承認したのでしょうか。あまりにも現実と離れた数値目標です。
また、少子化対策・施策の成果を計る重要な数値目標として、「正規雇用労働者の割合」だけではなく、「結婚希望実現指数」や「夫婦子ども予定実績指数」などの指数が数値目標として掲げられています。しかし、結婚組数の増加や子供の出生数の増加数、離婚数の低下、長時間労働の減少、など少子化対策の大切な直接的な多くの目標数値の設定が必要と思われますが、「施策に関する数値目標」ではこれらの重要な数値目標がありません。
少子化を止めるのは、「出生数の増加」あるいは「合計特殊出生率2.07」だけであり、各種の指数ではありません。少子化対策の最も重要な出生数の目標値と合計特殊出生率の目標値と達成目標期日が少子化対策の目標数値から漏れています。
なぜでしょうか。
少子化対策の目標数値を決める責務は誰に在るのでしょうか。少なくとも時の政府の少子化対策担当大臣は少子化対策としての目標数値を決定する権限と責任があるはずです。
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