T08-06

8.6.法律の制定と実施

⑴ 次世代育成支援対策推進法(2003年7月16日より段階的施行)
 家庭や地域の子育て力の低下に対応して、次世代を担う子供を育成する家庭を社会全体で支援する観点から、2003年7月、地方公共団体及び企業における10年間の集中的・計画的な取組を促進するため、「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)が制定されました。同法は、地方公共団体及び事業主が、次世代育成支援のための取組を促進するために、それぞれ行動計画を策定し、実施していくことをねらいとしたものです。この法律は、2014年の法改正により、有効期限が更に10年間延長されるとともに、新たな認定制度の導入など内容の充実が図られました。

⑵ 少子化社会対策基本法(2003年9月1日施行)
 2003年7月、議員立法により、少子化社会において講じられる施策の基本理念を明らかにし、少子化に的確に対処するための施策を総合的に推進するために「少子化社会対策基本法」(平成15年法律第133号)が制定され、同年9月から施行されました。そして、同法に基づき、内閣府に、内閣総理大臣を会長とし、全閣僚によって構成される少子化社会対策会議が設置されました。また、同法は、少子化に対処するための施策の指針としての大綱の策定を政府に義務付けています。

⑶ 子ども・子育て支援法等子ども・子育て関連3法(平成24年10月)
 幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援を 総合的に推進する法律。

⑷ まち・ひと・しごと創生法(2014年11月28日)
総則、まち・ひと・しごと創生総合戦略、まち・ひと・しごと創生本部よりなる法律。基本理念を掲げる法律

⑸ 子ども・子育て支援新制度本格施行(2015年4月1日)
 新制度では、基礎自治体である市町村が実施主体となり、「施設型給付」等の給付や「地域子ども・子育て支援事業」を計画的に実施し、こうした市町村による子ども・子育て支援策の実施を国と都道府県が重層的に支える仕組みとなる。

⑹ 次世代育成支援対策推進法延長(2015年4月1日~2025年3月31日)

⑺ 子ども・子育て支援法改正(2016年4月1日施行)

⑻ 子ども・子育て支援法改正(2018年4月1日施行)

⑼ 働き方改革を推進するための関係法律に関する法律(2018年7月6日公表)

⑽ 子ども・子育て支援法改正(2019年10月1日施行)

⑾ 大学等における修学の支援に関する法律(2020年4月1日施行)

⑿ 子ども・子育て支援法及び児童手当法改正(2021年5月28日施行)

 日本政府が少子化問題に気付いて28年間に、13の「各種プラン・指針・構想など」と、6つの「少子化社会対策会議の決定」と、12の「閣議決定」と、13の「法律制定や改定」が行われました。しかし、2022年現在、日本の少子化の流れは止められていません。合計45件のプラン・会議・閣議・法律などは、少子化をもたらしている根本の問題を意識的に避けて対策が実施されているかのように感じられます。なぜでしょうか。
 少子化社会対策基本法の(施策の基本理念)第二条では「・・・・家庭や子育てに夢を持ち、かつ、次代の社会を担う子どもを安心して生み、育てることができる環境を整備することを旨として講ぜられなければならない。」と規定しています。この基本理念には結婚できない人たちの存在が認識されていません。この法律は、日本人は誰でも問題なく結婚できる前提の上に立って制定されています。しかし現実は結婚できず子供を生めない人たちが大勢いるのです。
 すでに見たように、少子化をもたらしている重要な要因は、非正規雇用労働者と正規雇用者との酷い差別待遇、多くの低所得世帯の存在、被生活保護者よりも低い最低賃金、結婚相手にも出会えず子育てもできない長時間残業、結婚したがらない人々、晩婚化、多い離婚、女性総合職・専門職の厳しい労働条件などです。
 これ等の問題の解決には、労働基準法・最低賃金法などの日本の基礎的な法律や多くの関連法規の改定と、日本の社会構造や意識の一大変革が必要ですが、日本政府と官僚と政治家と有識者は、なぜかこれらの基本的な少子化をもたらしている問題への取組がなされていません。