T09-03

9.3. こども家庭庁は少子化対策をなぜ行わないのか

 前述のこども家庭庁の「令和5年度当初予算案の概要」をみると、「第2 結婚・妊娠・出産・子育てに夢や希望を感じられる社会の実現、少子化の克服」に於いて、次のように述べています。
少子化は予想を上回るペースで進む極めて危機的な状況にあり、わが国の社 会経済に多大な影響を及ぼす有事というべき課題である。
 このように正確に少子化の危険性の認識をしていながら、それが行動計画と予算に現れていません。僅かに「地域の実情や課題に応じた少子化対策」として100億円を一項目計上しているだけです。
 こども家庭庁が2023年度に設置することが決定され、その狙いや組織や機能が『少子化白書』の43~47ページに記されています。45ページには、次のようにその目的が記されています。
こども家庭庁においては、基本方針に沿って、これまで内閣府や厚生労働省に分散していたこども政策の司令塔機能を一本化し、各省より一段高い立場から、少子化対策を含むこども政策について一元的に企画・立案総合調整を行うこととしている。また、結婚支援、妊娠前の支援、妊娠・出産の支援、母子保護、子育て支援、こども居場所づくりや、困難な状況にあるこどもの支援などの事務を集約して、自ら実施することとするなど、少子化対策を含むこども政策を更に強力に進めていくこととしている。
 また、第4次の少子化対策大綱では非正規雇用労働者への不当な差別待遇や長時間残業への対策を行うとしていました。日本の少子化は次の状況が重なって急激に進行していることが分かっています。

 ① 結婚できない非正規雇用労働者への不当な低い年収の差別待遇、
 ② 被生活保護者より低い収入だ、結婚も生活も困難な最低賃金、
 ③ 結婚相手も巡り合えず出産を抑制する深夜残業を含む長時間残業、
 ④ 出産を思い止まらせる低い年収の世帯が多い
 ⑤ 晩婚化と妊娠と出産などの関する知識不足、
 ⑥ 女性総合職などの厳しい労働条件による未婚者の増大、
 ⑦ 増える離婚など

 こども家庭庁のトップになる方も、それを取り巻く幹部の方々も、この①~⑦が少子化を進行させていることは十分承知しているはずです。なぜなら、このことは内閣府発行の『少子化白書』の随所に記されているからです。さらに第4次の少子化大綱にもこれらの①~⑦の対策が重要であることは記されています。
 それにも関わらず、こども家庭庁の「令和5年度当初予算案」では①~⑦が完全に行動計画すなわち予算案から漏れています。言い換えれば意識的に排除されています。なぜか!その理由が理解できません。