T09-05

 失われた30年を取り戻し、少子化を防ぐために、一般国民の所得が増大し、非正規雇用者の150~200万円の年収が引き上げられて何れも600~800万円になったと仮定した場合の影響を見てみます。
計算の根拠はhttps://majimetoushi.com/nennsyuu-zeikin-syakaihoken「年収と所得税・住民税・社会保険料の早見表」です。次の表9—2は「40歳未満の独身または既婚で配偶者控除なし」の場合の早見表です。

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 たとえば、年収150万円の69万人の非正規雇用の地方公務員の場合には、この人たちの年収が650万円に引き上げられたと仮定すれば、表9—2から

 ◦1人当たり手取り金額増:4,925,648円-1,215,850=3,709,798円

となり、1人当たり370万円の手取り金額が増えます。この結果、69万人の非正規雇用の地方公務員だけで

 69万人×370万円=2兆5530億円

のお金が国内に追加されて流布します。
 さらに、2,075万人の非正規雇用者の50%に対して同様な年収の引き上げが実現できたとすれば、最大に見積もって

 2,064万人×370万円×0.5=76兆3,680×0.5=38兆1840億円

が新たに日本国内に流布することになります。
 これだけ多額のお金が国内に出回れば、その一部は貯金に回されるかもしれませんが、多くは何らかの形で消費されると思われます。この多額の消費は国内景気を沸き立たせ、各種商店やレストラン・旅行・企業の売り上げと利益が増え、一般会計歳入の所得税・法人税・消費税を大幅に増やすと予想されます。
 以上の計算は非正規雇用者に対する年収の引き上げだけ見ましたが、非正規雇用者に対する賃金の引き上げに刺激されて正規の職員・従業員の年収も必ず上昇すると予想されるので、日本国内に出回る資金はさらに膨大になり、所得税や法人税・消費税の増大は更に大きな金額になります。
 さらに、2,075万人の非正規雇用者の年収の増大は、この人たちの所得税の納税額の増額になります。年収200万円の人の所得税は上の表から26,363円/年です。この人たちの年収が650万円に引き上げられれば、その所得税は299,465円/年になり、1人当たりの所得税額は次の通り増えます。

 229,456円/年-26,363円/年=203,093円/年

2,064万人の非正規雇用者全員がこれだけの所得税を納付すれば、全部で

 203,093円/年×2,064万人=4,191,839,520,000円/年

となり、4兆1,918億円の所得税が増えます。2022年の所得税は20兆3820億円ですから約20%も増えることになります。非正規雇用者全員の半分の人しか年収が増えなかったとしても2兆円の所得税増です。これに加えて正社員の所得も増えると想定されるので所得税額は4兆円の増加に留まらないと思います。
 以上の結果として、公債費(借金)は大幅に減らせるか、うまくゆけば公債発行を行わずに、一般会計歳入を組めるかもしれません。
 非正規雇用者全員などに対する賃金引き上げはこのように国の経済を活性化し、すべての問題の解決を楽にします。そこで、日本の政治家・官僚・財界人・文化人・労働界の方々が、非正規雇用者全員などに対する賃金引き上げと最低賃金の引き上げの具対策について真剣に検討することが、日本が少子化の罠から脱出するために、極めて大切になります。