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1.4. 農業従事者の危機的な減少と老齢化

 日本はかなり早い時期から農村部では人口が減少し過疎化が進んでいます。図1—9を見ると59歳以下の比較的若い農業従事者の減少が顕著です。

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 農業従事者の老齢化の様子を図1—10に示します。図1—10から19歳以下の若い農業従事者が全国で1千人であり、2010年の219万人の農業従事者の0.46%です。農業から実質的に若者が消えています。なお、2020年には農業従事者は2010年の205万人から10年で136.3万人に減っています。
 図1—10によれば、農業従事者219万人のうち、実に95万人(43.4%)が70歳以上の高齢者です。

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 2023年にはこの人たちは83歳以上なっており、10年後には93歳です。95万人が10年後には93歳になり、実質的に農業は出来なくなります。
新しい資料では、2020年の農業従事者の64歳以下の人数は41.5万人になっています。これは1960年の農業従事者約1,190万人の約29分の1です。
 農業人口の減少と老齢化は日本の食料自給率を図1—11のように低下させています。自給率37%はもはや危機的な状態です。

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 農林水産省のデータによれば、自給率低下で不足した農産物を輸入して補い、その輸入先と金額は図1—12の通りです。

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 輸入総額は2020年で6兆2千億円です。これに対して国内の農産物総産出額は8兆9千億円です。農産物は国内生産を100とすれば輸入金額は69.7となります。食料品輸入金額は日本全土の農家の生産高の7割に迫っています。アメリカや中国などの輸入先の国の人々とその輸入商社が富み、その分日本の農民が貧しくなっている構図が浮かび上ってきました。これは農村における少子化が進んだ結果かもしれません。
 日本の少子化はすでに、ここまで日本の農業を危機的状況に追い込んでいます。日本の農業は機械化が進んでいるから大丈夫との見方があるかもしれませんが、狭く区切られ段々になった耕作地では農業機械が威力を発揮できる余地は少ないと思われます。
 狭い国土の日本で、各地に休耕田が目立ちますが、これは少子化による人口減少と農村人口の高齢化の影響であり、食料自給率低下の一因だと思われます。今後は山間部や地方村落の寂れや廃絶がさらに進み、農林畜産生産高が今後一層大きく減少し、食料不足が発生する恐れがあると思われます。
 日本はこの農業の危機的な事態に誰がどのように対処できるのでしょうか。若者を増やす政策の基本は少子化阻止しかありませんが、農業分野では子供を生める39歳以下(図1—10では29歳以下)の年代層の人は2010年の農業人口の僅かに1.36%であり、たとえこの人たちが子どもを多く生んでも、農村部での人口増は絶望的と言えます。
この日本農業を救い自給率を高める対策は、日本農業を魅力ある状態にして、農村部に人を投入・補充し、次のような施策を講じることだと思います。

① 都市部から農村部へ若者の移住を促進する施策を講じる
② ニートなどは農村ではやる気になるかもしれないので農村へ送り育てる
③ 外国からの良質な農民移民を受け入れる
④ 土地の集約を図り、少人数のまま大規模経営を進める
⑤ 農業の機械化・ロボット化・IT化を推進し魅力ある農業にする
⑥ 米など農産品の余剰が生じれば、生産制限をせず、備蓄を進める。
⑦ 農産品の高付加価値化を図る。この為に政府や農業大学を活用する
⑧ 商社や大手企業による農産品の買いたたきを防止する施策をとる
⑨ 日本の農産品より低価格の輸入食品に高い率の課税をする。
⑩ 農産品の輸入商社の利益に国内農産品保護の特別課税を課す
⑪ 余剰農産物は政府などが買い上げ、給食・困窮者支援などに使う
⑫ 国民の年収を上げ、安さだけの要求を無くし、中国輸入食品を抑える
⑬ 農家の所得減があれば、現金を補填する制度を創る
⑭ 休耕田を利用した輸入農産品の代替生産に資金援助する
⑮ 旱魃・病虫害・水害・盗難・獣凶作などの救済制度を創り強化する

 日本農業を疲弊させた重要な要因は国会議員の選挙の在り方にも問題があると思います。1票の重みを均等にすることを重視する最高裁判所の判決により、人口が減っている農村部の利益を代表する国会議員が減り、都市部の消費者と輸入商社などの利益を代表する国会議員が増えた結果、消費者や輸入商社に有利な食料供給体制が出来上がり、農村部の問題が無視され、農村の疲弊を招いていると思います。